LGBTと
アライのための
法律家ネットワーク
2019.02.21

Q&A

この提言の主なメッセージは何ですか?

1.国際競争力:優秀なLGBTの人材を獲得・維持するためのコスト

日本は、優秀な人材を巡って世界規模で競争をしています。現在、婚姻の法的平等を実現した26の国々は、LGBTの人材獲得という点において日本に対して競争上優位な立場にあります。なぜなら、これらの国々は、性別にかかわらず全てのカップルに対して同等の婚姻の権利を認め、よりインクルーシブな環境を提供しているからです。これに対して日本では、対等な競争環境の実現に向けた取組みとして、同性のパートナーと婚姻と同様の関係にあるが日本法の下では婚姻関係にあるとはみなされない従業員のために、企業が管理上も財政的にも負担の大きい特別な福利厚生制度を設けざるを得ない状況にあります。特別な福利厚生制度を設けたとしても、日本でビジネスを行う企業は、LGBTカップルが婚姻関係にある夫婦の権利と保護について定める法律から除外されることのデメリットを完全に払拭することができないため、競争上不利な立場に置かれているのです。

2.ダイバーシティの進んだ生産性の高い職場環境の推進

ダイバーシティとインクルージョンは企業の意思決定、生産性および収益性を向上させることが広く証明されていますが、日本政府が法律上婚姻の平等を認めれば、そのダイバーシティとインクルージョンに対する取組みを示すことができるようになります。ダイバーシティとインクルージョンの重要な要素は、雇用主が従業員1人1人の違いを尊重すること、そして、全従業員を透明性をもって公平に扱うことの2つにあります。性別、年齢、宗教、配偶者の有無、性的嗜好その他の違いといった特性を基準に従業員の取扱いを変えることは、労使間、そして職場の仲間の間に亀裂を生じさせ、従業員のモチベーション、チームワーク、創造力や忠誠心に悪影響を及ぼし、ひいては生産性にも負の効果をもたらします。婚姻の自由の拡大は、LGBTカップルの従業員と、婚姻関係にある従業員との間の処遇格差の解消に役立つだけでなく、LGBTカップルが自分に対して正直であると感じることで、より快適に感じることができるようになり、職場において創造力を十分に発揮することを可能にするのです。

3.ダイバーシティとインクルージョンが進んだコミュニティの支援

日本には国レベルでのLGBT差別禁止政策はなく、LGBTカップルは法的な婚姻保護を受けられていません。他方で、LGBTに関する知識や態度は、日本でも世界でもより寛容な方向へと変化してきています。電通が2019年に実施した調査によると、「同性婚」に賛成と回答した人が78%、LGBTの人たちを保護する差別禁止法に賛成と回答した人が72%となっています。しかし、大半のLGBTの人たちにとっては、日本の状況は依然として困難です。今回の電通の調査では、日本人の8.9%がLGBTと自己報告していますが、職場では、当事者の50.7%が同僚にLGBTであることをカミングアウトすることが難しいと感じているのに対し、難しくないと感じている人は21%に過ぎません。

現時点で婚姻の平等を認めている国を教えてください。

2019年2月1日現在、以下の26か国が完全な婚姻の平等を実現しています(※印がついている国はG7。以下同様)。

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、コロンビア、デンマーク、グリーンランド、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、イギリス、ウルグアイ、アメリカ合衆国

また、以下の9か国が、婚姻と平等の法的保護を実現しています。

チリ、クロアチア、チェコ共和国、エクアドル、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、スロベニア、スイス

婚姻の平等を支持する高裁レベルの判断が下されているのは、以下の3か国です。

リトアニア、ネパール、台湾

日本における婚姻の平等の現状を教えてください。

日本は、国内での婚姻の平等を認めておらず、また、同性婚を認める上記26か国で婚姻したLGBTカップルの婚姻関係も認めていません。渋谷区、世田谷区、大阪市、福岡市、那覇市、札幌市など、同性カップルに限定的な権利を付与するパートナーシップ証明書を発行している自治体はいくつかあります。千葉市は、公営住宅への入居申請資格など市が提供する各種サービスを享受できるよう、同性カップル及び事実婚関係にある異性カップルの双方に対してパートナーシップ証明書を発行した日本で最初の都市となりました。しかし、婚姻の権利が認められない現状では、これらの証明書だけでは、LGBTカップルが直面している差別や不平等(例えば遺言なしにパートナーから財産を相続できないこと、所得税に関し配偶者控除の恩恵を受けられないこと、外国人配偶者の在留資格が認められないことなど)を解消することはできないのです。

この提言を支持したいのですが、どう表明すればよいですか?

この提言への支持を表明するにあたり、定まったプロセスはありません。あなたが所属する組織がこの提言をサポートしたい場合には、所属する組織のロゴや提言への支持を表明する際に行う公式発表などと併せて、この提言をサポートする旨の正式な確認書(例えば、代表者からの電子メール等)をお送りください。支援を表明したい場合や、もっと知りたい場合は、LLANまたはinfo@llanjapan.orgまでお問い合わせください。

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