開催日:2026年7月15日(水)
会場:日本外国特派員協会(東京都千代田区丸の内)
共催:DLA Piper Tokyo
参加者:50名
第1部登壇:立石結夏 弁護士(経済産業省事件 原告代理人)
モデレーター:藤田直介(LLAN共同代表)
2023年7月11日、トランスジェンダーの職員に対する職場での処遇について、重要な最高裁判決がありました。経済産業省が、性同一性障害の診断を受けた職員の女性用トイレの使用を制限した措置をめぐる事件です。最高裁は、自認する性別に沿って社会生活を送る利益と、組織がそれをどう尊重すべきかについて、重要な課題を提起しました。さらに5名の裁判官全員が補足意見を付し、この課題を職場の現場で考えてほしいという強いメッセージを寄せています。
補足意見はこう述べています。原則は示せる。だが、それを職場でどう適用するかは、組織の規模も、施設の構造も、関係する職員の人間関係も一様ではなく、一律の解決策になじむものではない。そして裁判所は、事件が起きない限り判断を示すことができない――。だからこそ、現場で今、考えてほしい。本イベントは、この問いかけに答えようとする試みです。LLANは判決の翌年から研究会を重ね、企業の現場が必要としているのは「正解」よりも、本人から要望が出たとき、あるいはトラブルが起きたときに何を考えどう動くかの指針である、という気づきに至りました。
第1部では、この事件で本人に寄り添い続けた立石結夏弁護士に、判決文には書かれていない経緯を語っていただきました。本人はどのような要望を出したのか。経済産業省はそれにどう応えたのか。そして、何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか。
前例のない申し出を受けた最初の担当者は、自ら調べ、自ら考えました。他省庁に例がないかを確認し、本人から聞いた民間企業を訪ねて話を聞き、本人の希望と、職場や他の職員の状況の双方に目を配りながら対応の基準を定めます。所属部署への説明会を経て、中央官庁で初めての性別移行が実現しました。のちに最高裁判決が求めることになる、本人と組織、そして他の職員それぞれの利益の調整が、ここでは確かに行われていました。それでも、その後コミュニケーションは断絶し、解決までにさらに十数年を要する紛争へと発展します。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか。ぜひ立石弁護士の声に耳を傾けていただければと思います。
報告者の印象に残った場面
・約13分〜 申し出を受けた最初の対応。性別移行の基準の策定、所属部署への説明会
・約29分〜 最高裁判決は企業実務の何を変えたのか。制限する側が説明を求められる立場へ
・約34分〜 訴訟リスクを一気に高めたものは何だったのか。担当者の交代と、組織の同質性
・約39分〜 LGBT当事者が組織を訴えた裁判で、なぜ原告側がほとんど勝訴しているのか。講演冒頭に示された裁判例一覧の「赤」の意味を、立石弁護士が解読します
なお、LLANでは本判決の英訳を作成し公開しています。
第2部(企業現場・当事者・人事法務それぞれの観点からの議論)の開催報告はこちらです。
本イベントは、Global Law FirmであるDLA Piperと、同事務所のLGBTQ+ネットワークであるIrisからの「ぜひ実現しよう」というお声がけから始まりました。企画の立ち上げから会場の設営・運営、そしてその費用負担に至るまで、全面的なご支援とご後援をいただきました。心より感謝申し上げます。
- 本動画は、LLANおよびDLA Piper 東京パートナーシップが主催したイベントの教育的資料として提供されており、日本におけるトランスジェンダーの権利に関する法的動向および職場におけるインクルージョンに関する広範な考察を扱うものです。
発言内容および見解は各登壇者個人のものであり、必ずしもDLA Piperの見解を代表するものではありません。また、本動画は情報提供および教育目的のみで提供されており、法的助言を構成するものではありません。
本動画を再共有または告知・拡散する際は、視聴者が「本コンテンツは情報提供および教育目的のみで提供されており、法的助言を構成するものではない」と認識できるよう、必ず本注意事項を付記してください。 ↩︎
