LGBTと
アライのための
法律家ネットワーク
同性婚2018.02.13

【論点】日本国憲法は同性婚を禁止しているのか?

私たちLLANは、LGBTその他のセクシュアル・マイノリティの方々が安心してその能力をフルに発揮して活躍することのできる社会の実現のために様々な活動を行っています。その中で、例えばメディアの方から、「日本国憲法は同性婚を禁止しているのではないですか。」という質問を受けることがあります。今回はこの問題についてお話しします。

2015年2月18日、参議院本会議において、安倍晋三内閣総理大臣は「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない。」との発言をしました 。(注1)また、同年4月1日にも参議院予算委員会において同様の発言をしました 。(注2)これらの発言については、安倍首相が「日本国憲法は同性婚を禁止しており、同性婚を認めるためには、憲法の改正が必要である」と考えていることを示すものであるという趣旨の報道がメディアにおいて実際に散見されます 。(注3)

しかし、現行憲法は、本当に同性婚を禁止しているのでしょうか。

私たちLLANは、「日本国憲法は同性婚を禁止していない」と考えています。

以下では、その理由について述べます。

まず、婚姻について規定した日本国憲法第24条を見てみましょう。

日本国憲法第24条第1項は次のように規定しています。

“婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない。”

そして、憲法と同性婚の関係を語る上では、日本国憲法第24条の定める「両性の合意のみに基づいて」という文言の解釈が、非常に重要となります。

「両性」という文言を見たとき、何を思い浮かべるでしょうか。両方の性、すなわち「男性」と「女性」を意味すると理解する人が多いかもしれません。つまり、この文言だけを見ると、婚姻は「男性」と「女性」の合意によって成り立つため、「女性」と「女性」や、「男性」と「男性」の婚姻は、「両性の合意」とは言えない、すなわち、憲法は同性婚を禁止しているという理解になるかもしれません。憲法が同性婚を禁止していると唱える人の多くがこの理解に立っていると考えられます。

しかし、日本国憲法第24条の制定経緯を理解すると、憲法はこのような考え方で「両性の合意」と規定している訳ではないということが分かります。

なぜ、日本国憲法第24条は、「両性の合意のみに基づいて」婚姻が成立すると規定したのでしょうか。

話は日本国憲法制定当時に遡ります。

第二次世界大戦前、日本は封建的な家長制度を採用していました。すなわち、家長である者(例えば、父親や長男などが考えられます。)の許しがない限り、例え愛しあう者同士であっても、両当事者の意思だけでは結婚をすることが許されなかったのです。しかし、戦後、日本国憲法起草時においては、この家長制度を否定し、愛しあう両当事者の合意のみで婚姻ができると定めました。これが日本国憲法第24条第1項です。つまり、「両性の合意のみに基づいて」とは、「両当事者の合意のみで」婚姻が認められるという意味の規定なのです。

そして、日本国憲法の制定当時といえば今から70年程前であり、同性愛が公式の場で議論されることはほとんどない時代でした。同性同士で結婚したいと考えている人がいるなど、起草者たちは考えてもいなかったでしょう(ただし、もちろんこの時代にも同性愛は当然に存在していました。)。憲法起草時において同性同士の結婚はそもそも想定していなかったのですから、同性同士の結婚を禁止するために「両性」という文言が採用されたとは考えられないのです。また、日本国憲法第24条第1項には「夫婦」という言葉もありますが、これは、上で述べたような起草者の発想に基づいて「両性」が結婚したケースを想定して、結婚したカップルを「夫婦」と呼んでいるにすぎず、この言葉を根拠に日本国憲法が同性婚を禁止していると考えることができないことは、「両性」という言葉について述べたことと同様です。つまり、私たちLLANは「日本国憲法は同性婚を禁止していない」と考えます。そして、昨今では「日本国憲法は同性婚を禁止していない」と考える憲法学者が増えつつあります 。(注4)

このように、専門家の間でも日本国憲法は同性婚を禁止していないという理解が増えつつあるにもかかわらず、メディア等においては「日本国憲法は同性婚を禁止している。」という見解が散見されるのが現在の日本の状況です。さらに、市役所に婚姻届を提出した同性カップルがその届出を受理されず、不受理の理由として「憲法第24条および民法第740条により不受理」とされたケースもあります 。(注5)

私たちLLANは、LGBTその他のセクシュアル・マイノリティの方々が安心してその能力をフルに発揮して活躍することのできる社会の実現を目指しています。そのような社会の実現のためにはすべての人が平等に扱われることが必要です。私たちの活動の中で、日本での同性婚の法制化が話題に挙がることもあります。そのため、今回は、日本国憲法第24条と同性婚の関係について、
私たちLLANの考えを皆様に知っていただきたく、この記事をアップいたしました。

同性婚についてはいろいろな議論があると思いますが、少なくとも日本国憲法は同性婚を禁止していないという正しい理解がさらに社会に浸透していくよう、今後も活動を重ねていきたいと思っています。

(注1)HuffPost安倍首相「同性婚は現憲法で想定されていない」 法律家やLGBT支援者から異論も第189回国会本会議第7号議事録 
(注2)第189回国会予算委員会第15号参議院議事録
(注3)Japan Times Gay marriage push in Japan faces constitutional barrier、ブルームバーグ『浮上する同性婚の権利、渋谷区条例案で-首相は憲法改正「極めて慎重」』、 日本経済新聞「身近なところから憲法を考えよう 」
(注4)法学セミナー第737号11ページ(小竹聡拓殖大学教授執筆)
(注5)毎日新聞『同性婚「国が認めて」 自治体支援は限界/国際水準とギャップ』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP